シンポジウム 平和構築の可能性:私たちは世界の人々と共感できるのか?(終了)

 

2月5日、東洋英和女学院大学国際関係研究所主催(港区麻布地区総合支所・東洋英和女学院大学大学院国際協力研究科共催)ウェビナーシンポジウム「平和構築の可能性:私たちは世界の人々と共感できるのか?」を開催しました。登壇者3名に加え、日本国内外39名の聴衆の皆様にご参加いただきました。

 

 

まず、キーノートスピーカーは山田満早稲田大学教授で、ご著書『平和構築のトリロジー:民主化・発展・平和を再考する』明石書店(20215月)に描かれる(1)走錨する民主主義、(2)まだらな発展、(3)重心なき平和、の3つの切り口をテーマに、国際情勢を理解する視座を語っていただきました。まず、研究者と実務者の双方のご経験を説明していただきました。学生時代のカイバル峠の旅から、米国留学、定時制含む高校教員時代と市民運動への参加、教育と国際開発をつなげるフェアトレードなど社会変革の実践経験、平和構築の研究へつながる選挙監視活動や紛争解決に関する執筆など「実践と研究の相乗効果」を説明していただきました。『平和構築のトリロジー』で主張されている、個々の想像性(imagination)と創造性(creativity)を通じ、国境を越えた連帯が必要と締めくくりました。

 

奥谷京子CWB (Community Work Without Border) CAMBODIAアドバイザーからは、CWBカンボジアの活動を紹介していただきました。フェアトレードの過去のビジネスモデルから現在はアジア7カ国の現場で現地の若者と女性の自立を全寮制の職業訓練活動を通じ「ゼロから始める」活動へ発展してきた点、そして一例としてカンボジアのコンポントム州では、起業家精神を養成し、伝統文化に誇りを持ち、自らに自信をもち自立していく支援の内容を説明していただきました。現地の農業振興(カシューナッツ生産)と伝統舞踊の習得と日本訪問時の舞踊ツアーを並立させる活動を通じ、カンボジアの人々の誇りと自信が向上するという事例が紹介されました。

 

長谷部貴俊JIM-NET海外事業プロジェクトマネージャーからは、イラクでの小児がん医療支援の様子が紹介され、かつ昨年8月の米国軍のアフガニスタン撤収以降の状況も説明していただきました。まず、2003年のイラク戦争で使用された劣化ウラン弾の影響で苦しむ小児がん患者の医療支援では、がんに対する社会教育の推進とがん患者の子供たちを支える支援施設(JIM-NETハウス)の運営について紹介していただきました。現地に根付く支援を追求する中で、今後の展望としてイラク人医師同士の能力向上を支援する可能性についても言及がありました。アフガニスタンの現状については、広大なアフガニスタンの地では都市部と地方で大きな認識のギャップがあること、女性のエンパワーメント支援についても地域社会の特質を理解した上で支援する必要がある点が指摘されました。

 

QAでは、9つの質問が寄せられ、現場経験と研究の相乗効果について、現地の支援対象となる若者の動機付けの課題、支援の中で現地文化をどう扱うか、コロナ禍でもできる活動とは何か、など活発な議論が繰り広げられました。

 

 

本学国際関係研究所では、引き続きタイムリーで国際情勢の本質を議論するシンポジウムを開催して参ります。